「果実味」ってどんな味?
ワインの味わいを表現するのに、渋みや甘さ、酸味などがよく使われますが、「果実味」ってなんだかわかりづらくありませんか?
このサイトでもワインの紹介をするときに「果実味」という言葉はよく使いますが、正直に言うと「なんかピンとこない言葉だよな~」なんて思いながら使っています。
その、なんとなくわかるけどいまいちモヤモヤしている「果実味」という言葉について、僕なりにお話ししようと思います。
一応断っておくと、味覚などの感覚は人によって感じ方や強さなどが違い、他人の味覚を自分が感じることは出来ないので、もしかしたら自分で思い込んでいるだけで、間違ったことを言っているかもしれません。また、そもそも感覚の話なので、僕の思っていることと全く違うように感じるかもしれません。その辺を考慮しながら、なにか参考になれば幸いです。
「果実味」は味覚ではない?
ワインの味わいは、この記事(白ワインは冷やして?赤ワインは常温?(ワインを飲む温度))でも触れていますが、今見たら果実味のことは何も書いてませんね。^^;
実は果実味は味覚で感じるものではなく、嗅覚で感じるものとされています。味覚は舌で刺激として感じるものなので、渋い、酸っぱい、甘いなどの刺激を味覚として感じますが、果実っぽいという刺激はなく、果実っぽい香りが果実味と認識されるようです。
そういう意味では、先ほどの記事中で「渋み」、「酸味」、「甘さ」にしか触れていなかったのは間違いではないのかなと。
一応補足をしておくと、人間の味覚は大きく分けて「苦味」、「酸味」、「甘み」、「塩味」、「旨味」の5つで、例えば「苦味」にはいろいろな種類の苦みがあり、科学的には細かく分けると30~40種類くらいに分けられるそうです。
そうすると「渋み」という味覚はないようなのですが、例えば、苦味のある要素と酸味のある要素が合わさると渋みになる、という感じなのかもしれません。
ただ、ワインの味わいとしては「渋み」として感じるので、ワインの味を表現するときには「渋み」を使うことは良いと思います。
「果実味」とはフルーティのこと?
では、ワインの中でのそのシックスセンス(?)の「果実味」とはなんぞや?となりますが、僕の持論では果実味は大きく2種類あると思ってます。
一つはよく言う「フルーティ」って言葉。これと果実味は同じものと思って良いかもしれません。
フルーティなワイン
フルーティなワインと聞いて何が思い浮かびますか?
- 軽く爽やかで、酸っぱい果実の味わいがある冷やして飲みたい辛口白ワイン
- 熟したブドウを食べてるような、甘みのあるドイツの白ワイン
- ブドウを搾ってそのままワインにしたような、ちょっと甘さも感じるチリやオーストラリアの赤ワイン
こんなとこでしょうかね?
まさに「フルーティ」って言葉がぴったり合うようなこれらのワインは、「果実味のあるワイン」と言えると思います。
ポッテリとした濃厚さを感じるワイン
思いっきり言葉にしづらく、無理矢理言葉にするとこんな感じになるんですが、口に含んだときに濃厚で重い感じのするフルボディのワインというと近いでしょうか。
具体的に挙げると、カサーレ・ヴェッキオとかカナヤなどはこれにあたります。
フルーティと言えなくはないんですが、フルーティというとなんか軽くて飲みやすい感じがしませんか?
濃厚でフルーツ感は多くあるのだけれど、フルーツから甘さだけを取り除いたようなフルーツ感といいますか・・・
カナヤやアマローネのワインを飲んだことがある方はなんとなくわかるかもしれませんが、渋柿のような、干しブドウのような、そういう味わいがあるんですが、決してみずみずしい、酸味と甘さを豊富に感じるフレッシュなフルーツではない、ドライフルーツのようなコッテリとしたフルーツ感はあるが甘さはあまりないという感覚があるんです。そのような味わいも、僕は「果実味」と表現します。
飲んでもらえば話は早いんですが、やはり感覚を言葉で表現するって難しいですね。
「果実味がある」は決して甘いわけではない
先ほどの話でも出てましたが、「果実味がある」からといって決して甘いわけではないのです。
もちろん、「果実味があって甘い」ワインもあります。比較的安価なチリワインなどは、そういうワインも多いと思います。
ニューワールドと言われる、比較的最近ワインを作り出した産地(フランス、イタリアなどに比べてですが)は、暖かい地域が多く、フランスやイタリア北部などは平均気温もさほど高くないため、ワイン造りは暖かい地域は向かないような考えがあったのかもしれません。
しかし今では、チリやカリフォルニア、オーストラリアなどでも良質なワインが造られ、そういった地域のワインは果実味が豊富で、甘さも残っているワインが多いです。
果実味と甘さの関係
ワインは発酵によって糖分がアルコールに変わり、お酒になります。
ブドウが熟すほど糖分は高くなり、アルコールに変化しきれない分の糖分が残るので、暖かい地方のワインは甘いことが多いのです。
また、糖分が多いほど、アルコールに変わる量も増えるので、アルコール度数も高くなる傾向があります。
果実味は多いけどあまり甘くないワインは糖分がアルコールに変わった量が多く、味は濃くアルコール度数が高くて甘さの少ないワインになるのでしょう。
「果実味」とは?
最後に僕なりの結論を出したいと思います。
「果実味」とはズバリ2種類、
- 甘酸っぱい果実そのもののようなさわやかでフレッシュな味わい
- 熟した濃厚な果汁のある果実から甘さだけを取り除いたような、濃密で凝縮した時間を感じる味わい
と「さわやかで軽い果実味」と「重くてコッテリした果実味」の二通りの果実味を使い分けるのが良いと思いますが、皆さんはどのように感じますか?